資料請求

不公平なグループワークを変える -dot votingによる「ありがとうポイント」で貢献度の偏りを可視化、学びの質向上へ―

2025年11月12日

不公平なグループワークを変える
-dot votingによる「ありがとうポイント」で貢献度の偏りを可視化、学びの質向上へ―

 

【概要】

 大学のグループワークでは、一部の学生に負担が集中する「ただ乗り(フリーライダー)問題」が生じ、学修の不公平さや採点の難しさが課題となっています。
 こうした背景を踏まえ、健康科学大学 健康科学部 リハビリテーション学科・講師・坂本祐太は、名古屋葵大学の駒形純也 助教、国際医療福祉大学小田原キャンパスの大塚篤也 助教、健康科学大学 健康科学部 リハビリテーション学科の福田京佑 助教と共同で、学生同士が互いの貢献を評価する「ドット投票法(dot voting)」を活用し、グループワークにおける貢献度を可視化する手法を検証しました。
 本研究では、2021~2023年度に大学1年生220名を対象として授業データを収集し、貢献度のばらつき(偏り)を統計解析しました。その結果、多人数のグループほど貢献度のばらつきが大きくなる一方、同一メンバーによる課題の繰り返しにより偏りが低下することが明らかとなりました。これにより、教員はグループ内の貢献状況を簡便に把握でき、早期の教育的支援に役立つ可能性が示されました。

 本研究成果は、教育分野の国際的専門誌であるJournal of Applied Research in Higher Educationにオンライン掲載されました(2025年10月オンライン掲載)。

 

【研究内容】

 大学教育では、主体的な学びを促す手法としてグループワークが幅広く活用されています。しかし、学生一人ひとりの貢献度を把握し、適切に評価することは容易ではありません。グループ内での発言量や役割分担は外部から見えにくく、教員が全てを観察することには限界があります。また、成果物による評価は、どの学生がどのように課題に取り組んだかを反映しにくいという問題があります(図1)。その結果、一部の学生へ役割が集中することで貢献度のばらつきが生じ、学生間の学修機会に偏りが生まれることが指摘されています。

 

 

 そこで坂本らは、学生同士が他者の貢献に「ありがとうポイント」を配分するドット投票法に着目し、参加状況を数量的に可視化する指標「Contribution-PAAS(Peer Assessment Among Students)」を構築しました(図2)。本研究は、この課題に対し、学生同士による評価を活用し、グループワークにおける貢献度を簡便に可視化する仕組みを検証したものです。

 

 

本手法を2021~2023年度の授業に導入し、学生を対象に検証した結果、次の知見が得られました。

  • グループ人数が多いほど、一部の学生に役割が集中しやすい
    特に4人グループと比べて8人グループでは、課題の偏りが有意に大きくなりました。
  • 同一メンバーで課題を反復すると、貢献の偏りは縮小する
    1回目で特定の学生に負担が集中しても、回数を重ねることで役割分担が進みました。

 貢献度の高低が視覚的に示されることで、学生自身が主体的に行動を振り返り修正するきっかけとなります。また、指導者は早い段階で貢献の偏りや学生の特性を把握でき、適切な支援につなげることができます。本手法は、自己調整学習の促進や心理的安全性を高める枠組みとしても期待されます。

 

【研究助成】

 本研究は、一部JSPS科研費[24K20686](坂本)の支援を受けて実施されました。

 

【論文情報】

Sakamoto Y, Komagata J, Otsuka A and Fukuda K (2025)
タイトル: Visualizing contribution levels in group programs: a dot-voting peer-assessment approach.
掲載雑誌: Journal of Applied Research in Higher Education(高等教育研究)
出版: Emerald Publishing
URL: https://doi.org/10.1108/JARHE-07-2025-0556

 

【問い合わせ先】

健康科学大学 総務部 総務課
TEL: 0555-83-5200
FAX: 0555-83-5100