人を「治す」だけでなく、「なぜ治ったか」のメカニズムを解き明かしたくて、大学院へ。画像
卒業生インタビュー
長坂 和明 さん
国立大学大学院博士課程在籍

2012年度理学療法学科卒業生
長野県篠ノ井高等学校出身
人を「治す」だけでなく、「なぜ治ったか」のメカニズムを解き明かしたくて、大学院へ。

 理学療法学科を卒業した後、筑波大学大学院へ進学。2年間の修士課程を終えて博士課程へと進み、現在は「国立研究開発法人 産業技術総合研究所」で、脳卒中の研究に携わる長坂さん。大学院進学のきっかけになったのは整形外科分野の教員の言葉だった。「人を治すのも大切だけど『どのようにして人が治ったのか』を考えることも重要だと授業で聞いて。人の体がどのように動くのかなど〝メカニズム〞にもともと興味があったので、なるほど!と膝を打ちました。理学療法士(PT)として患者さんの治療に直接関わる道もあるけれど、疾病や治療方法について研究することで困っている人を助ける方法もあるな、と3回生の頃から思い始めたんです」。進学を決意するまでは悩みに悩んだという長坂さんの背中を押したのは所属するゼミの教員だった。「あとは大学院の先生に『行きます』という連絡をすれば進学が決定する、という段階でまだ迷っていたんです。PTとして地元の病院で働く方がよいのでは、という思いもあって……。健康科学大学は先生と学生の距離がとても近いんですが、僕の葛藤も先生はお見通しだったんでしょうね。最後の最後に背中を力強く押してくれたんです。そのおかげで〝今〞があるんだと思います」。
 現在は、猿の脳卒中について研究している。脳の一部が機能しなくなり体の一部が麻痺すると、そこに痛みが出るケースが臨床現場で多いという。「例えば麻痺のある患者さんがリハビリで麻痺部分を動かせるようになるのは、脳が回復しているから。そうではなく痛みが起こるということは、脳の回復において何かトラブルが起きているのではないかという仮説が立てられます。その仮説に基づいて原因を究明するのが僕の研究。僕が生きているうちに研究成果が臨床での治療に活かされるのは難しいかもしれません。でも仮説を実証できたときの達成感はすごい。その瞬間、『世界で自分しか知らないことがある』って最高にワクワクしますよ」。
 学会での発表やシンポジウムへの出席などグローバルに活躍する長坂さんだが、大学生活を振り返ることも多いと語る。「今になって、患者さんを診ることに直結していない統計学や語学など一般教養科目の大切さを感じますね。決して『研究職だから』ということではないと思います。例えば統計学。今まではPTが一人ひとりの経験則で治療していたものを、治療で得られる数値を統計データにすることで全員が同じ治療をすることができるようになるかもしれない。語学も英語の論文を読み書きするのに苦労し、必要性を痛感しました。実際にPTという立場でも、多くの患者さんの治療に直接関わっているからこそ世界に発信できる論文があるかもしれないですよね。あらゆる学びが、医療の可能性を広げる種になりうるのではないでしょうか」。豊かな学びが、新しい視野につながる。そうすれば社会に出てから見える景色も変わってくるはずだ―そう語る長坂さんは、ノーベル賞を夢見て、医療の未来を創造しようとしている。

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